2015年10月 2日 (金)

作家・大村友貴美さんらと懇談

 20年前、盛岡にいた当時の後輩が夕刻、職場にやってきて、「大村さんって覚えてます? あの人、横溝正史ミステリ大賞を受賞して、今じゃ人気作家なんですよ。今夜、当時の上司だったKさんも交えて食事会をするんですが、よかったらいかがですか」と誘ってくれました。
 もちろん快諾。
 大村さんとは、「首挽村の殺人」で2007年に第27回の同賞に輝いた大村友貴美さん。盛岡では外部ライターとして契約していて、僕は直接の担当者ではなかったけれども、最終的なチェックをする立場として名前は知っていたという関係です。
 食事会には担当者だった後輩2人も参加。僕はまあ、「大蔵大臣」の期待込みでのお呼ばれってことです。Kさんとも5年ぶりぐらいの再会でした。
 当時の盛岡では何人かのライターさんと契約していましたが、僕は立場上、直接のお付き合いはしていませんでした。直接の担当者である後輩と別のつながりができちゃうと、どうしても担当者の頭越しに物を言ってくる人が出てきて、担当者としては面白くない事態になってしまうのを避けるためです。
 だから、大村さんも書いた原稿は見ていたものの会う機会はほとんどなく、ライターさんたちの中では当てになる存在だった覚えがある程度でした。
 それが、今では地元紙の岩手日報に連載小説「ガーディアン」(10月6日完結予定)を書くほどの人気作家なのですから、感無量です。
 作品を読む時間がないままお会いしてしまったので、話は盛岡にいた頃の思い出や震災関係のことが中心に。「これまでは、予め想定した結果に向けてストーリーを構築していくスタイルでしたが、次の作品は結果を定めないで書いていく方法でチャレンジします」とのこと。大いに楽しみです。

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2015年9月26日 (土)

「つながりの会」(その5)

 加藤秀俊先生ゆかりの方々の集まり「つながりの会」の総会が、東京・六本木の国際文化会館で。例年はランチ懇談会でしたが、今回は加藤先生の近著「メディアの展開」(中央公論新社)が5月に出版されたことを記念し、合評会+茶話会というスタイルに。
 この、いわば夏休みの課題図書を、買ったのは早かったものの、読むのはつい後回しになってしまい、結局、ほぼ半分までしかたどり着かなかったのでした。宿題をやり残して2学期を迎えたような気分です。
 しかしながら、どうも同じような状況の人は少なからずいたと見え、合評会は少々盛り上がりに欠けた気がします。実態は先生のサイン会になってしまった感じで、申し訳ありませんでした。
 茶話会では、ニフティサーブの「現代文化生活研究会(FBUNKA)を支えてくれていたKさんや、かつて仕事でお世話になったCDIの疋田正博さんらとよもやま話。疋田さんと同じく京大時代の教え子で今回初参加のSさんの話で、FBUNKA系の幹事になっているPさんとのつながり(それもかなり昔)がわかるなど、思いがけない「つながり」があるのを、またしても感じた一日でした。

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2014年10月13日 (月)

伊東潤「城を攻める 城を守る」(講談社現代新書)

 年を取ると目が覚めるのが早くて嫌になります。きのうは25キロ近く走ったから、ゆっくりと眠れると思ったんですけどね~。
 ここしばらく城見物にも行っていませんが、「城好き」を自称する身としてタイトルに惹かれたこの本、期待を遥かに上回る内容でした。
 登場するのは26の城。定番の大坂城、会津若松城はともかく、「懸河城」「高天神城」となると、好事家じゃないと知らないような城が取り上げられています。「姫路城」が出てこない「城本」は初めてじゃないでしょうか。
 従来の「城本」の大半が建造物としての紹介に重きを置いているのに対し、この本は攻防戦のあった城を取り上げ、今に残る遺構から実戦で果たした役割などを解説しているのが大きな特徴です。このため、合戦のなかった「現存12天守」は取り上げられていないのです。
 天守どころか、石垣もろくにない山の中の「土の城」の遺構を見て、そこで行われた合戦に思いを致すのは、よほどの知識の蓄積と想像力に恵まれないとできない業です。半分くらいは「聞いたこともない城」の物語がこれほど面白いとは、小説家の書いた歴史研究本の良さを十二分に発揮していると思います。
 ちなみに、「懸河城」とは「掛川城」の旧称だそうです。
 司馬遼太郎の小説では、織田信長が長篠の合戦で武田勝頼を破った後、すぐ追撃しなかったのは、「武田家がこの敗戦を契機に自滅するのを待ったから」ということになっています。概ねその通りですが、実際は放っておいてもダメになった訳ではないことがよくわかります。かつて遠州地方で暮らしたことのある身には、実に興味深い内容でした。

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2014年8月16日 (土)

赤坂真理「愛と暴力の戦後とその後」(講談社現代新書)

 赤坂真理さんは名前しか知らなかった作家です。誠に失礼なことながら、お名前からは「シリアスさとは無縁な」印象を受けていました。
 書評で知った「愛と暴力の戦後とその後」は、いわば夏休みの課題図書。読書感想文は子供の頃から苦手中の苦手でしたが、その点から言えば、この本は「課題図書」向きではない、感想の書きにくさがあります。
 1964年生まれで東京・高円寺育ちの赤坂さんの個人史(生活史)を軸に、体験しなかった「戦後」について「そもそも」を追究していく中でぶつかる「アメリカ」。占領、日本国憲法、安保条約、学生運動、沖縄、貿易摩擦、何だかアメリカが日本で育てようとした「アメリカの理想」がつぎはぎだらけになった挙句、終戦直後の理想とは別物の「平和なニッポン」になっちゃっていることへの、解決しなくてもいいけど気になる違和感みたいなものの正体が明かされています。ただ、ひょっとすると、前作の「東京プリズン」を読んでからのほうが、より理解が深まるのかもしれません。
 ご自身も書いていますが、3~4年の生まれ年の違いで体験や感想に大きな差があることは、1961年生まれの僕も強く感じるところです。その点で、「原っぱ」とか「松田優作」とか、赤坂さんの語っていることと意見の異なる点は結構あります。
 それにしても、ネットで公開されているこの本へのいろいろな感想文を見ると、自分のそれが稚拙過ぎるのをつくづくと実感させられます。

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2013年8月12日 (月)

「西武と巨人のドラフト10年戦争」(宝島社)

 読み終わったのはだいぶ前ですが、記録の意味で。
 元西武球団代表の坂井保之氏とスポーツライターの永谷脩氏の二人が、同じテーマをそれぞれ別に書くという構成で、江川卓「空白の一日」、松沼兄弟・郭奉源「争奪戦」、そして「KKドラフト」について振り返っています。
 巨人ファンの僕としてみれば、巨人あってのプロ野球であり(今や妄想だけど)、何でクラウンライター・ライオンズなんて零細球団が「絶対に獲れっこない」江川をドラフト1位で指名したのか不思議でなりませんでした。
 ネタバレは最小限にしたいので、詳細には触れませんが、後に坂井氏率いる西武が巨人を球界の盟主の座から引きずり下ろすに至った原点は、ここだったことを強く感じさせられます。そりゃ野球ですから実際に引きずりおろしたのは選手であり監督やコーチを含めたチームですけど、あそこまで徹底していたのは坂井氏というリーダーあってのことだったのは、当時の巨人ファンならたいてい思っていたはずです。
 内幕ものならではの面白さもさることながら、「巨人何するものぞ」という反骨が、永谷氏を含めて今も残っているのが興味深いところです。
 永谷氏の書いた章で、内海哲也投手が東京ガスに入った年のドラフトで、巨人が内海投手とバッテリーを組んでいた捕手を獲ったことを実名で記しています。ごく当り前の記述でいて、見る人が見れば痛烈な一撃と受け取れかねないあたりが、実に巧妙な鞘当てのように思えてなりません。

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2013年8月 7日 (水)

早野透「田中角栄 戦後日本の悲しき自画像」(中公新書)

 田中角栄元首相について書かれた本は何度か読んだことがあります。どうしても金脈退陣、ロッキード事件以降に重点を置いた本が多い中、生い立ちから死までを順に408ページにわたって記述している本書で、金脈退陣以降の話は282ページ以降からの120ページほどを占めているに過ぎません。
 逆に言えば、一般にはあまり知られていない田中角栄氏の若き日々について触れられている割合が本書では多く、それはかなり興味深いものでした。
 住宅、道路に関する議員立法はよく知られていることながら、敗戦からの復興が第一だった昭和20年代に、こうした法律が国の主導ではなく、議員の主導で成立していたことは、「国民の生活が第一」だった政治理念を感じずにはいられません。角栄氏の弟子は口先だけとしか見えませんでしたが。
 東日本大震災と福島第一原発事故からの復興、それ以前から深刻だった「ワーキング・プア」などの貧困問題。今の日本が抱えている問題も、若き角栄氏の時代と似通っています。ナチスによるワイマール憲法形骸化の手法なんかより、角栄氏の議員立法の手法を学んで生かす議員が出てきてほしいものです。

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2013年7月 7日 (日)

藤田伸二「騎手の一分」(講談社現代新書)

 7日付の朝日と読売の書評欄で取り上げられていましたが、書評の内容たるや「?」の付くものでした。
 まず読売。スポット的に短い記事なのはいいとしても、短い記事でこそ書き手の力が問われるもの。取り上げるポイントが出版社の広告とほぼ一緒ではね~。「実は読んでいません」と白状しているのと変わりありません。読んだ結果がこれなら…、申し上げるべき言葉はありません。
 朝日は一般的な書評として取り上げていました。その分、中身は充実しているはずなのに、大半が本書の要約となってしまっています。この書評を読んで本書を買おうと思った人は皆無じゃないでしょうか。もちろん、書評は広告ではないから、購入意欲をそそらせる内容であることは必要条件ではないとしても、取り上げる以上「一読の価値あり」なのだから、「もうわかったからいい」と読者に思わせてしまったらダメでしょう。
 山崎豊子氏の「運命の人」にも出てきましたが、法律の世界では「クリーンハンズの原則」といって、「自ら法を尊重し、義務を履行する者だけが、他人に対しても、法を尊重することと義務を履行することを要求ができる」という概念があります。
 「勉強が苦手」という藤田ジョッキーは、たぶんそんな概念の呼び方は知らなくても、一人の人間として「クリーンハンズの原則」を大切にしているからこそ、「おかしい」と思ったことに説得力のある異議を唱えられるのです。
 付和雷同の不平屋どもには、この辺りの呼吸がわからないでしょうけど。

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2012年8月12日 (日)

沖方丁「天地明察」

 「歴史小説を読む時には、年表や地図をそばに置いておく」とは、畏友tkkaku氏の言で、うならせられたものの、自らは実行せぬままでいました。
 ようやく6月に吉川弘文館の「日本史年表・地図」を、先月には山川出版社の「詳説日本史図録」を購入し、畏友の示唆から8年!もたってから環境を整えた次第。日本史年表・地図はは35年も前の我が高校時代にもあったけど、4年前に刊行が始まった詳説日本史図録の充実した内容には目を見張らせられます。たった890円、高校の副読本とはいえコストパフォーマンスの良さでは究極と断言できます。
 この詳説日本史図録の「元禄文化3…諸学問の発達」というページにある表で、和算の関孝和と暦学の渋川春海(安井算哲)が並んでおり、その生まれ年はほぼ同じです。
 この表がきっかけではないにせよ、二人が同い年だったかもしれない点に着目して小説「天地明察」を構想した沖方丁(うぶかた・とう)氏の慧眼ぶりには、全く驚かされました。
 囲碁、地学・天文学、算術…どれも苦手だとか知識がないことばかり。僕のような読者は少なからずいるだろうに(と信じたい)、すんなりと読めます。
 この秋には、岡田准一と宮崎あおいらが出演する映画が公開されます。たぶん6年以上前と思われるこの小説の書き始めの段階で、映画化の際はこの二人が出演することを織り込み済みだったと思わされるほど、はまり役になるのは確実でしょう。こうしたことも含め、様々な布石が敷かれていることに気付かされる作品で、久しぶりに読み終えてすぐ二度読みを始めてしまったのでした。

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2011年9月 7日 (水)

文楽「ひらかな盛衰記・紅葉狩」

110907  だいぶ前に薦められておきながら読んでいなかった三浦しをんの小説「仏果を得ず」が8月、双葉文庫から出版され、読んでみると実に面白い。文楽の名作を章立てに引用し、物語全体が展開する中で、それぞれの名作のストーリーを生かす構造をさりげなくこなしている三浦しをんの実力には驚かされます。
 それがきっかけで、国立劇場の文楽9月公演を観に行くことに。小説では、いわゆる「序」から「破」へとつながる章のタイトルに引用されている「ひらかな盛衰記」がメーン。あと1本は「紅葉狩」。
 「仏果を得ず」の主役は人形遣いではなく、若手の太夫、つまり義太夫語りで、芸に厳しい三味線弾きと組まされて成長していく物語です。それもあって、今回はイヤホンガイドを借りずに義太夫と三味線に浸ってみようと思っていたら、席は何と床(=舞台に向かって右側の、太夫や三味線弾きが座る場所)の真ん前。
 偶然ながら願ったり叶ったりで、存分に堪能することはできましたが、何か感じるものがあったかというと…。こればっかりは自らの感性の乏しさを嘆くしかありません。

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2011年1月22日 (土)

「眞説 光クラブ事件」と「青の時代」

 オウム真理教事件とあさま山荘事件の両方の主役級関係者に、母校の出身者がいます。そのうえ、戦後の光クラブ事件の主犯だった山崎晃嗣も母校のOBだと知ったのは、つい数年前のこと。
 保坂正康氏の「眞説 光クラブ事件」が角川文庫版になった1年ちょっと前、つい読みそびれてしまったのですが、先日、書店で改めて目にして購入しました。
 三島由紀夫の「青の時代」が光クラブ事件をテーマにしたことで知られていますが、これも読まず終いでした。この小説に出てくる千葉県のK市は僕の育った所だし、そのK市を取り上げた三島の作品があるなら、母校の先生だって教えてくれてもよさそうなものですけど、そんな覚えはありません。
110122  「青の時代」の冒頭で、K市が「低能児の多い町」だの「淫風甚だし」とか紹介されているのを読むと、これじゃ教えてくれなかったのも無理もなかろうとは思いましたけど…(u_u。)
 保坂氏の推論では、東大でほぼ同級生だった三島由紀夫と山崎晃嗣は、いずれも友人のあまりいない同士ながら友人であり、であればこそ「青の時代」には山崎晃嗣が伏せていた軍隊での悲惨な体験を基にした話も出てくるのだろう、というもの。この二人が自殺した日が同じ11月25日なのも、後から自決した三島由紀夫にとっては偶然だったのか意図的だったのか…。
 11月25日生まれ、K市で9歳の誕生日を迎えた日に三島自決という衝撃的な事件があった身としては、この解き得ない謎を、深く考え込まずにはいられません。
          ☆
 写真は、表題とは全然関係ありませんけど、日勤だったこの日、築地場外市場の喫茶店マックモアでお昼に食べたカマトロ定食(950円)。場外市場は観光客だらけだったのに、ちょっと入った場所にあるここはすんなりと入ることができてありがたかった。

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