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2007年6月22日 (金)

吉村昭「大黒屋光太夫」

070621 6月22日(金)
 この夏はあれこれと忙しそうなので、「休めるうちに」と思い、20日から両親を連れて箱根で静養。って、特別にすることはないから、温泉宿でゴロゴロしてただけです。
 ゴロゴロのお供が本書。
 光太夫と言えば、井上靖「おろしや国酔夢譚」がよく知られていますが、僕は映画でしか観ていません。想像を絶する苦難の数々を乗り越えて、ようやく帰国した光太夫たちを、幕府は鎖国の禁を犯した者として杓子定規に幽閉・・・という展開に、「何と愚かしい政権だったことよ」と思う一方、ゴルバチョフが日露(日ソかな、当時は)親交の歴史に触れたスピーチで「コダユ(光太夫)」に触れ、彼の存在の重要性を今日も忘れていないことを示す場面では「それにしても、同じ人間の営みとして、光太夫に対する日露の扱いの差はあり過ぎじゃないの」と、どこか釈然としない気持ちを感じたものでした。
 新史料に基づいた本書は、その釈然としなかった部分をすっきりと解消してくれました。時の江戸幕府も、そこまでバカではなかったようです。小説「
おろしや国酔夢譚」の発表当時は、光太夫幽閉が半ば定説化しており、あの終わり方自体はそう描くしかなかったでしょう。
 7か月の漂流の末に辿り着いた異国の地で10年もの間、ひたすらに帰国を果たさんとする光太夫たちの行動は、
本質こそ全く違うものの、今日の拉致問題の被害者たちの姿を思わずにはいられません。
 司馬遼太郎が「菜の花の沖」で描いた高田屋嘉兵衛の拘束事件当時、帰国した光太夫がまだ健在だったのも驚き。やはり歴史小説を読む時は、地図と年表をいつでも参照できるようにした方がいいのかしらん。

 (写真は、箱根・強羅公園で咲いていたバラ「キャサリン・コルデス」)

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